春闘宣言

 世界経済は、緩やかな成長を続けていましたが、米中貿易戦争の拡大、アメリカの利上げによって新興国をはじめ各国経済が減速し、さらには、難航するイギリスのEU離脱問題や欧州各国の政治的混乱などのリスクも表面化しており、新たな「危機」への懸念は強まり、先行きの不透明さは増しています。
 日本では、6年におよぶ「アベノミクス」が、一部の大企業にのみ利益をもたらす一方、中小零細企業や地域経済にはその恩恵は行きわたらず、増税や社会保障費の負担増、実質賃金の低下による将来不安の高まりが個人消費を停滞させ、国民・労働者には景気回復の実感はありません。“国の借金の肩代わりと株価買い支え”と指摘される日銀の金融緩和策は、財務リスクの拡大と株式市場の歪みをもたらし、マイナス金利政策による負の影響が顕著となるなど、その行き詰まりは明らかです。そして、リスクを抱え不透明な世界経済の動向が企業業績にも影響を及ぼし始めており、ますます不安定な状況となっています。
 こうしたなか安倍首相は、財界に対して6年連続となる賃上げ要請を行いました。しかし、財界は、昨春闘までとは様相を変え、「賃金の引上げは政府に要請されて行うものではない」とし、あくまでも各社の収益に見合った前向きな検討をするよう傘下企業へ呼びかけるにとどまっており、賃上げに対する姿勢は強いものではありません。
 この間業績が好調だった損保では、昨年相次いだ大規模自然災害によって、業績の見通しは下降しています。さらには、国内市場の縮小や不安定な経済動向、IT化や技術革新に伴うビジネスモデルの変化など、事業環境が先行き不透明なことを理由に、企業規模の大小を問わず、損保経営の危機感は依然として強くなっています。そのもとで、大手グループは、国内でのマーケットシェア競争を激化させ、M&Aを通じた海外事業や新規事業領域の推進などによって収益拡大をめざしています。中小社もこうした競争に巻き込まれ、各社の政策すべてが「収益力の強化」をめざしたものとなっており、「合理化・効率化」をおしすすめています。そうしたことから、損保に働くものの処遇や働き方が見直され、労働生産性を追求する動きも強まっており、外資における雇用問題にも通じています。また、相次ぐ自然災害への対応においては、全社的な応援派遣が重なって、労働実態は悪化することとなり、その一方では「早期支払い」を競い、企業宣伝に使われることも生じています。こうした政策の歪みや矛盾は、すべての損保労働者に押しつけられ、生活や労働条件を脅かし、働きがいと産業の社会的役割の喪失を生んでいます。
 こうした実態に対して、職場からは、不安や不満、疑問や怒りの声が数多く出され、処遇、労働条件を「一歩でも改善してほしい」という切実な思いとともに、賃金水準の引き上げへの期待と要求はいっそう高まっています。そして、経営も政策実現をめざすうえで、労働者の真摯な主張には耳を傾けざるを得ないことに変わりはありません。
 私たちは、このような情勢と職場の現実を直視し、2019年春闘を、「明日をみすえ今をただし、職場からたたかい期待と要求をかなえる」としたスローガンのもと、○雇用と人間らしく働ける職場を守る、○産業の社会的役割を守る、○人間を大切にする労働組合として奮闘する、の3本を柱にたたかいます。支部・独立分会は、「賃金水準の引き上げ」をはじめとする、職場の切実な思い、期待の高まりに寄り添い、いま最も求められる要求と課題を掲げ、全損保統一闘争のもとで、その実現に向けて全力でたたかいます。そのために「交流・共同の場」を一つでも多く築き、地域の仲間が「集ま って、語り合って、励まし合う」とりくみをすすめます。また、国民的課題にも視野を広げ、多くの労働者と連帯し、平和で民主的に暮らせる国をめざしたとりくみをすすめます。
 本日確立された春闘方針のもと、諸要求実現のため、職場で、地域で、機関と職場が一体となって2019年春闘勝利にむけたたかうことをここに宣言します。  


2019年3月13日
全損保第79回定期全国大会



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