「保険金不払問題」金融庁に要請
金融庁に要請を行う全損保代表  
労働組合としての立場から金融庁へ求める
 12月6日、全損保の代表は、「保険金不払問題」について、金融庁に要請を行いました。11月25日に行われた金融庁による保険業法第132条1項に基く損保26社への行政命令を受けて、労働組合としての立場から、二度とこのようなことが起こらないよう求めたものです。
 金融庁は行政処分で、この問題の原因は損害保険各社の管理態勢の欠陥などの「構造的問題」にあるとしています。保険会社各社が襟を正し、それに携わった者すべてが問題改善にあたることは当然です。しかし、この問題の根底には、1998年の保険「自由化」以降、金融業が進めてきた商品面の規制緩和、それをてことした損保の競争促進政策があります。今回の処分は、各社の責任を問う一方で、金融庁自らの責任にはまったく触れられていません。
金融庁とやりとりする全損保代表
 この要請では、このような「不払問題」の背景や原因を明らかにした上で、金融庁の責任を明らかにして、二度とこのような事態を招かないよう抜本的な対応をはかることを求めました。また、金融庁は、行政処分の一方で、保険料率の弾力化など事態を招いた「自由化」政策を一層進めようとしていることから、その方向ではなく、国民・消費者のために真に役立つ行政を行うよう求めました。
金融庁の責任を明らかに、抜本的な対応を求める
 これに対し、応対した担当官は、不払問題は損保各社の態勢の不備によるもの、商品認可については問題ないなどと述べ、自らの責任は認めようとしませんでした。また、保険料率の弾力化についても、事後チェックの中で適切に対応していくと説明しました。
 全損保は、そのような対処の積み重ねが今日の事態をもたらしていること、競争のもとの実情については再三申し入れていること、商品認可はじめ行政の対応一つひとつが損保全体に何をもたらしてきたかを受け止めるべきだ、と問題指摘し、これを契機に二度とこのような事態が起こらないように対応するよう重ねて求めました。
 全損保は、今後も、競争が激しくなる一方の損保の実態を明らかにし、国民・消費者のための損害保険をめざし、金融庁への申入れを含め、積極的にとりくみを進めていきます。


2005年12月6日
金 融 庁 長 官
五 味 廣 文 殿
全日本損害保険労働組合
中央執行委員長 吉田有秀

要   請   書

 11月25日、貴庁は、「付随的な保険金の支払い漏れ」が判明した損害保険会社26社に対し、保険業法第132条第1項に基づく行政処分を行った。その理由として「保険金の支払い漏れ」の発生原因が「商品開発から支払い管理に至る態勢の不備に基づくものであり、経営管理態勢や内部管理体制の欠陥といった構造的な問題に起因する」という問題があげられている。
 しかし、「保険金の支払い漏れ」は、無秩序な商品乱開発・乱売競争、それと同時に進められた際限のない「合理化」競争がもたらしたものであり、その根本には貴庁が進める「自由化」行政がある。1998年「自由化」以降、貴庁は保険料率の弾力化をはじめとした商品面の規制緩和をはかり、それを梃子に損保業界に対する競争促進の政策を推し進めてきた。これが、損保各社の商品乱開発・乱売競争、無秩序な販売競争を招来し、態勢が不備なままで商品を提供するという事態を招いている。さらに、このような政策を通じ、各社のかつてない「合理化」競争が促されてきた。これにより、保険金支払いをはじめとする態勢が脆弱化し、個々の従業員にも限界を超えた業務が課せられ、損害保険会社としての対応力が発揮できないようになっている。このように、「保険金の支払い漏れ」問題とは、個々の保険会社だけの問題ではなく、実態が26社にわたっていることからも、まさに貴庁が責任を負う「自由化」の構造的な問題である。貴庁が「支払い漏れ」を招いた保険商品を認可してきたことも厳しく指摘する。幣労組は貴庁に対し、「自由化」直後からこれらの諸問題を解消するよう度重ねて要請してきたところである。
 それにもかかわらず、貴庁は、本行政処分を下す一方で、保険料率認可のさらなる弾力化をはかるなど、これまでの延長線上で「自由化」行政を推し進めようとしている。本件は、何らかの特殊な事情から生じた問題ではなく、競争=消費者利便という「自由化」の「理念」そのものを根本から問いただすものである。いうまでもなく、国民・消費者に対し、損害保険業界の健全な発展に最も責任を負うのは、貴庁である。貴庁自らが「自由化」を真摯に反省し、この事態を「自由化」による競争の「歪み」をただす契機とするよう行政として役割を果たさなければならない。ついては、以下のとおり要請する。


  一.「付随的な保険金の支払い漏れ」に関する貴庁自らの責任を明らかにし、二度とこのような事態を
    招かないよう抜本的な対応をはかること。
  一.保険料率のいっそうの弾力化を見直し、競争強化の方向ではなく、補償機能の発揮を重視した
    国民・消費者に真に役立つ健全な損害保険業界の発展をめざした行政を行うこと
以 上
附)声明「保険金不払問題について 「自由化」が生んだ競争の「歪み」をただす契機に」 
2005年10月12日  全損保常任中央執行委員会(拡大)



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