TPP参加、規制改革のなかで 協同組合組織、共済事業にいま何が問われているのか


11・14 協同組合のこれからを考えるシンポジウム

121名が参加して開催されたシンポジウム
121名が参加して開催されたシンポジウム



 11月14日夕方、コア・いけぶくろ:東京で、「協同組合のこれからを考えるシンポジウム」が農業・農協問題研究所の主催で開催されました。シンポジウムには、農協、共済、損保に関わる労働者、学者を中心に121名が参加し、全損保からも40名が参加しました。

 このシンポジウムは、TPPへの参加、規制改革のなかで、日本の農業にどのような影響を与えるのか、その根幹をなす協同組合組織が今後どうなっていくのかを明らかにするために企画されました。また、共済に関しては、5月にJA共済連と東京海上日動社が「包括的な業務提携に向けた協議開始」を発表したことに対し、共済事業、損保産業にどのような影響をもたらすのか、についても明らかにするものとなりました。

 三国英実理事長(農業・農協問題研究所)の開会あいさつの後、コーディネーターの高橋巌氏(日本大学:生物資源科学部教授)が、パネリストである田代洋一氏(大妻女子大学:社会情報学部教授)、本間照光氏(青山学院大学:経済学部教授)、大関政敏氏(ゆうき青森農協:代表理事組合長)の3名を紹介し、パネルディスカッションを開始しました。

 田代教授は、「戦後農政」の歴史を説明した上で、TPPの受け入れ、規制改革会議・産業競争力会議をテコに、農業・農村をビジネスチャンスに結び付けようとしている安倍政権の危険性を訴えました。そして、ポストTPP対策としての全国連と財界・民間大企業との連携の動き(全中と経団連による「農業活性化」WG開始、JA共済連と東京海上日動社の包括的業務提携協議の開始、全農が農林中金やみずほ銀行と連携して農産加工や配送、レストラン事業で民間企業との提携をめざす動き)にふれ、「地域の生活を総合的に守る」ために設立した協同組合組織と、利潤を追求する財界、民間企業との提携が、日本の農業を解体する危険性を訴えました。

 次に、保険と共済を研究している本間教授からは、共済事業の成り立ちの歴史が説明され、今般発表されたJA共済連と東京海上日動社の包括的な業務提携の動きに対し、どのような問題があるのかを事例をあげて説明されました。そのなかで、第一に「包括的」、「共済と保険の垣根を越えて」とされていることに対し、「民間の保険が営利をやめて、国民に生存権を保障する社会保障や社会保険になったり、『人間の組織』になることはありえない。逆に、共済が『資本の組織』になることもあり得ない。したがって、『垣根を越える』というのは成りたたない」と、協同組合組織の持つ共済事業と営利目的の保険事業の違いを明らかにしました。第二に、「商品やシステム開発等のノウハウを持つ東京海上日動」と「農村地域に根ざした強固な事業基盤を持つJA共済連」との「強みや特徴」を活かした提携とされていることに対し、「この意味は、頭脳と神経、心臓を保険会社が押さえ、マーケットを共済が提供することに他ならない」と指摘し、だからこそ、共済事業に関わるものは、協同組合組織と共済事業の成り立ちや良さを再認識することが必要であることを強調しました。
※本間先生が今回のシンポジウムでお話しされた内容は、現在発売している雑誌「世界12月号」(岩波書店)により詳しく掲載されています。

コーディネーターの高橋教授(日本大学) 田代教授(大妻女子大学) 本間教授(青山学院大学) 大関代表理事組合長(ゆうき青森農協)
コーディネーターの高橋教授
(日本大学)

田代教授(大妻女子大学)

本間教授(青山学院大学)

大関代表理事組合長
(ゆうき青森農協)

       
 農協経営者である大関組合長からは、田代教授、本間教授の発言を受け、現場の農協でどのようなことが起きているのかについて説明がありました。原発事故による風評被害の影響や、米単価の下落による農協経営の厳しさ、信用・共済事業の専門化による職員教育の難しさが語られました。そして、「私たち農協がなすべきことは、農家や組合員、そして地域に根ざした組織であり続けることです」と、あらためて地域・農家の生活を守る協同組合の重要性が明らかにされました。

 パネラーの発言を受け会場からは、東京海上日動社が進めた契約係制度廃止の経緯、小規模共済の現状などの発言がされた後、コーディネーターの高橋教授が、「本日のパネルディスカッションで、安倍政権が進める規制改革や農政の問題点が共有でき、『地域の生活を総合的に守る』という農協の理念も明らかになった。そして、営利目的ではない協同組合や共済の果たすべき役割も再度認識できた。当面は、TPP交渉の行方を注視しつつ、規制改革に歯止めをかける運動を広げていこう」と呼びかけがあり、閉会しました。

 このシンポジウムでは、TPPや規制改革が農業、共済にもたらす弊害と「保険と共済」の違いを学び、あらためて損保産業の真に健全な発展をめざす運動の必要性を実感しました。今後も本日学んだことを全損保の運動にいかしていくこととします。


参加者の感想から
協同組合の将来像について不安を感じました。現政権や施策のままでは将来崩壊してしまうかもしれない。TPPや業務提携はその一歩に感じました。協同組合の良いところを残しながら、将来に進む道がないのか、もっともっと深く考えて組織を動かさなければ、外国や日本の一部の営利集団に飲み込まれてしまうと思います。(損保関係)
大変参考になりました。TPPというと関税のみがクローズアップされる傾向がありますが、産業構造さらには日本社会をも変えてしまうものであるとの認識が強くなりました。(損保関係者)
TPPをきっかけとした協同組合のアイデンティティーの危機が迫っていると感じました。事業の透明性、民主的運営を貫き、協同組合の存在意義を考え直すよい機会になりました。(共済関係者)



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