新年のごあいさつ

安心して働ける職場をめざして

2018年1月 全損保中央執行委員長 浦上義人

 安倍政権が4年あまりすすめてきた「アベノミクス」による円安・株高は、大企業に莫大な利益を享受させましたが、中小零細企業や地域経済にはその恩恵がほとんど行き渡っていません。国民・労働者にとっても、2019年秋に予定される消費税増税や社会保障費の負担増などによる先行き不安が高まり、4年半で実質賃金が約20万円下落するなど、家計の厳しさは増しており、消費は低迷し続けています。政府が自賛する雇用関係指標の改善では、4年間で正規雇用の増加が22万人であったのに対し、非正規雇用は200万人強増えるなど、安心して働ける環境が整備されているとは言えません。さらには、「働き方改革」として雇用形態による賃金格差の解消、長時間労働規制の見直しを掲げる一方で、裁量労働制の対象範囲拡大や高度プロフェッショナル制度の導入など労基法の大改悪も、通常国会への上程が予定されるなど、労働者をとりまく環境も大きく変化しています。そして、自衛隊の任務拡大、改憲論議が具体化するなど、昨年は国民の意思に反して日本の平和と民主主義の危機が深まった年でもありました。

 損保では、業績は順調に推移しています。一方で、市場の縮小や自然災害の大規模化と多発、不安定な経済状況に加えて、IT化や技術革新に伴うビジネスモデルへの対応が求められるなど、事業環境が先行き不透明なことを理由に、経営の危機感は依然として強くなっています。そのもとで、大手グループでは、国内での徹底した顧客囲い込みによるマーケットシェア争いを激化させ、さらなる海外事業の推進や新規事業領域での収益拡大をめざしています。中小社も競争に巻き込まれ、各社の政策すべてが「収益力の強化」と「収益拡大」をめざしたものとなっており、事業費削減、労働生産性の追求、アンダーライティングの徹底がすすめられています。こうした施策は、職場に多様な「歪み」をふりまき、働く仲間の雇用や生活、労働条件を脅かし、働きがいの喪失と「不安」が蔓延する職場をつくりだしています。

 こうしたなか、「儲けが少ないから」と、外資系損保2社で雇用問題が生じました。ニューインディア社の日本支社では、「売上が落ちた」「ロンドン支社に比べて経費の効率が悪い」との抽象的な理由で、就業規則に違反して定年再雇用者の「雇止め」が強行されました。また、ゼネラリ社では、「日本の市場で思うように収益が向上しない」と、日本支店を閉鎖し、社員全員の雇用を切ろうとしています。全損保は、「損保で働く仲間の雇用と健全な産業・職場を守る」方針のもと、組織をあげてたたかってきています。ニューインディア社の雇止め問題では、11月30日、東京地裁で和解が成立し、雇止めから5ヵ月での職場復帰をかちとりました。今年は、東京都労働委員会へ救済を申し立てたゼネラリ分会の要求実現にむけて、たたかいへの結集が求められています。

 このようななか迎えた2018年は、何よりも国民や働くものの声や願いが優先される1年にしていかなければなりません。そのためにも、いまが私たちの声と力で情勢が変えられる歴史的転換点であることに確信をもち、いのちとくらし、平和と民主主義を守るため、働くものが声をあげ、労働組合をいかして運動をすすめていくことが求められています。

 今年も全損保は、企業や職場の違いをこえて集まれる産業別単一組織という良さをいかし、組合員が「集って、語り合って、励まし合う」とりくみを軸に、損保に働く仲間が安心して働ける職場をめざして運動をすすめていきます。私も、この労働組合の先頭に立ち、“人間の視点”、“働くものの視点”を大切に、奮闘していく決意です。





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