春闘宣言

 2年を超えた新型コロナウイルス感染症の拡大は、相次ぐ変異型の出現によってロックダウンや在宅義務化などの行動制限が解除できずいまだ終息のめどが立っていません。加えてロシアによる国際法を無視したウクライナ侵攻もあって、世界経済見通しは再び減速しています。

 日本も同様に、感染拡大は収まっていませんが、行動制限が一定緩和されていることもあって、ばらつきはあるものの企業業績は回復してきています。上場企業の9月期決算では、全産業の純利益額は前年同期の2倍となり、コロナ禍前の水準を上回っています。しかし、こうして生み出された利益は、コロナ禍に苦しむ国民には回っていません。大企業の内部留保が過去最高を更新する一方で、実質賃金は減少し、個人消費は落ち込んだままです。さらには、原油価格の高騰を背景に食料品を中心に物価が上昇し、家計を直撃するなど、国民にはかつてない将来不安が広がっています。

 しかし、政府がすすめるコロナ対応は、国民の不安を払拭するものとはなっていません。そして、「政治とカネ」の問題に対し、事実を説明せず明らかにしない政権の姿勢が厳しく問われており、国民の不信を増加させています。こうしたなか岸田首相は財界に対し、「賃上げ税制」をテコに「業績がコロナ禍前の水準に回復した企業は3%を超える賃上げを期待する」と要請しました。しかし、経団連はこれまでの姿勢を変えておらず、企業業績のばらつきを背景に一律の賃上げを否定し、「業績がいい会社は月給の水準を上げるベースアップの実施による基本給の引き上げが望まれる」との姿勢にとどめています。

 損保では、コロナ禍でも、大手グループが過去最高益を見込むなど、業績は全社的に堅調です。しかし、人口減少などによる既存市場の縮小、頻発・激甚化する自然災害など、これまで経営が注視していた要因に加えて、長引くコロナ禍、スピードが求められるデジタル化への対応など、事業環境の先行きは不透明さを増していることから、損保経営の危機感は、企業規模の大小を問わず依然として強くなっています。そのもとで、大手グループ経営は、国内での徹底した顧客囲い込みを通じてマーケットシェアを競い合い、M&Aを通じた海外事業や新規事業領域での収益拡大をめざしています。中小社もこうした競争に巻き込まれ、各社の政策すべてが「収益力の強化」をめざしたものとなり、「合理化・効率化」、労働生産性を追求する動きも強まっています。そして、コロナ禍への対応として、出社人数を制限するための在宅勤務などテレワークが推進され、「人間関係が疎遠になる」との声が多く出されるなど弊害も明らかになっています。こうした労働生産性の追求やコロナ禍を契機とした働き方の急変、「合理化・効率化」を具体化する施策がすすめられていく過程で、損保の職場には「歪み」が様々なかたちでふりまかれ、働くものの雇用や生活、権利、労働条件が脅かされています。こうした「歪み」が押しつけられる職場には、「働きと処遇」の矛盾に悩み、心身ともに疲弊する実態があります。そして、「将来不安」ややり場の無い不満が充満しています。私たちがとりくんだアンケートには、数多くの疑問や怒りの声、処遇、労働条件を「一歩でも改善してほしい」という切実な思いが語られ、賃金水準の引き上げへの期待と要求がいっそう高まっていることが明らかになりました。そして、経営も政策実現をめざすうえで、そうした労働者の主張には真摯に耳を傾けざるを得ないことに変わりはありません。

 私たちは、2022年春闘を、「要求に確信をもって組合員の力を結集し、職場からともにたたかう」としたスローガンのもと、○雇用と人間らしく働ける職場を守る、○産業の社会的役割を守る、○人間を大切にする労働組合として奮闘する、の3本を柱にたたかいます。コロナ禍においても、「集まること」の大切さを忘れず、「賃金水準の引き上げ」をはじめ、いま最も求められる要求と課題を掲げ、全損保統一闘争に結集し、知恵と工夫で主張と団結を強め、全力でたたかいます。

 本日確立された春闘方針のもと、諸要求実現のため、職場で、地域で、機関と職場が一体となって2022年春闘勝利にむけたたかうことをここに宣言します。

2022年3月16日
全損保第85回定期全国大会



このページのTOPへ