春闘宣言

 新型コロナウイルス感染症への対応やウクライナ危機によって、世界各国で歴史的な物価高が続いています。その対策として各国ですすめられる急激な金利引上げは、為替・株式市場を不安定にし、景気後退リスクを高め、世界経済の成長見通しが下方修正されるなど、その先行きは混沌としています。
 日本では、全国的な行動制限が解除され、上場企業の9月期決算では、経常利益が18%増加しコロナ禍前の水準を上回るなど、大企業を中心に業績は好調です。その一方で、40年ぶりと言われる急激な物価高騰は、家計を直撃し、実質賃金の目減りと個人消費の停滞を招くなど、企業が稼ぎ出す利益がコロナ禍に苦しむ国民には回っていないことが明らかになっています。また、物価上昇を価格に転嫁しづらい中小零細企業の経営は圧迫され倒産件数が増加するなど、雇用も含めて国民にはかつてない将来不安が広がっています。
 こうしたなか政府は、防衛費を増額するための大増税を検討する一方で、コロナ対応において求められる医療体制の充実やケア労働者の処遇改善はすすめられず、その政策に対する説明責任を果たさない政権の姿勢が厳しく問われ、国民の不安は払拭されず、その不信を増加させています。
 春闘にむけて岸田首相は、経済対策の一環として「インフレ率を超える賃上げの実現」を財界に求めています。これに対し経団連は、物価高について持続的な賃金上昇につながる好機だと強調し、会員企業に「ベアを中心に物価高に負けない賃上げ」を呼びかけてはいます。しかし、中小企業も含め、どこまで波及するかは見通せていません。
 損保では、企業規模の大小を問わず、既存市場の縮小、自然災害の頻発・激甚化など、これまで経営が注視していた要因に加え、コロナ禍やウクライナ危機の長期化による経済停滞、スピードが求められるデジタル化への対応といった従来とは次元の異なる課題を抱え、事業環境の先行きは不透明さとともに厳しさを増しており、各経営は、危機感や焦燥感を一層募らせています。そのもとで、大手グループ経営は、国内での徹底した顧客囲い込みを通じてマーケットシェアを競い合い、M&Aを通じた海外事業や新規事業領域での収益拡大をめざしています。中小社もこうした競争に巻き込まれ、各社の政策すべてが「収益力の強化」をめざしたものとなり、「合理化・効率化」「労働生産性の向上」を追求する動きを強めています。そして、コロナ禍への対応としてすすめられるテレワークでは、職場、職種による対応のばらつき、コミュニケーションの不足、という課題が明らかになっています。こうした中、会社政策の具体化がすすめられていく過程で、損保の職場には「歪み」が様々なかたちでふりまかれ、働くものの雇用や生活、権利、労働条件が脅かされています。こうした「歪み」が押しつけられる職場には、その矛盾に悩み、心身ともに疲弊する実態があります。そして、将来や雇用、生活や処遇、賃金や働き方等に対して、不満や不安が広がり大きくなっています。私たちがとりくんだアンケートには、数多くの「何とかしてほしい」という一層深まる厳しい現実、大変切実な実態、非常に強い思いや声が訴えられ、賃上げを柱とする“要求”がかつてなく強まり大きくなっていることが明らかとなりました。そして、経営にとっても、政策実現をめざすうえで、そうした労働者の主張には真摯に耳を傾けざるを得ないことに変わりはありません。
 私たちは、2023年春闘を、「今こそ賃上げ 主張を束ねて団結を強め、確信をもってたたかう」としたスローガンのもと、○雇用と人間らしく働ける職場を守る、○産業の社会的役割を守る、○人間を大切にする労働組合として奮闘する、の3本を柱にたたかいます。「今、賃上げせずして、いつ賃上げするのか」、いま最も求められている要求と課題を掲げ、その実現にむけて、全損保統一闘争に結集し、引続きコロナにも負けず、知恵と工夫で主張と団結を強め、全力でたたかいます。
 本日確立された春闘方針のもと、諸要求実現のため、職場で、地域で、機関と職場が一体となって2023年春闘勝利にむけたたかうことをここに宣言します。

2023年3月15日
全損保第87回定期全国大会



このページのTOPへ