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4・18シンポジウム この職場から 日本の安心安全は守れるのか パネリスト報告 A
桑田富夫さん 食の安全の問題をどう見るか
冷凍餃子事件の概要にも触れて


生協労連委員長 桑田富夫さん
桑田)  生協労連委員長の桑田です。冷凍餃子事件の概要や、これを契機にみえてきたことについて、生協労連の討論も踏まえて、ご報告します。

■冷凍餃子事件の概要について
◆生協労働者、労働組合としてのお詫びと事件の性格
 みなさんのなかにも生協の組合員さんがいらっしゃると思います。私の立場は立場として、冷凍餃子事件ではご心配、ご迷惑をおかけしていることに、お詫びを申し上げたいと思いますし、こうしたことが二度とおこらないように、生協の労働者、労働組合として頑張りたいということを最初に申し上げておきたいと思います。ただ、現在もこの問題は進行中といいますが、ご存知のように日本の警察と中国の公安がまったく対立して、残念ながら真相解明が難しい状況で、この問題をすっきりした形でお話しするには時間がまだかかると思います。
 そういうことなので、まずみなさんにこの問題についてお話しするとともに、同時に、この問題は、生協の運動と事業が規制緩和のなかでいろんな問題を抱えてきたという問題と、性格が異なっており、問題は分けて考えていただきたいということを、今の段階では、申し上げたいと思います。そうは分けられないだろうともお考えになるかもしれませんが、今日はそういうふうな形でお話させていただきたいと思います。

◆日本の食の安全に重大な危機を及ぼす問題
 この事件は、1月31日の朝日新聞の1面が、いわばことの始まりであり、これ以降、対応に追われる日々を送っているということになります。このリードを読み上げます。「日本たばこ産業(JT)子会社のJTフーズが輸入した冷凍餃子を食べた千葉、兵庫両県の3家族、計10人が下痢や嘔吐などの中毒症状を訴え、そのうち女の子5歳ら3人が、一時重態になっていたことが、30日分かった」「いずれも中国の食品会社天洋食品工場の製造。両県警が餃子を鑑定したところメタミドホスなど有機リン系農薬の成分が検出されたため、JTフーズは同工場製造の23品目約58万点の自主回収を始めた」とあります。生協のことは書いていないのですが、問題の商品は、天洋食品にJTフーズが依頼した商品であり、生協としてはJTとの委託契約でコープ商品をつくっていたということですが、この問題が、生協だけでなく、日本の食の安全にとって重大な危機を象徴する事件だということです。

 さて、1月30日の晩、JTと生協の役員がそろって記者会見をしたわけです。日本生協連としては、とにかく急いで「この商品を食べないでください」「大変危険ですので回収させていただきたい」と全国に徹底したいために記者会見を行いました。JTフーズと一緒にやったほうがすぐに伝わる。一刻も早くお知らせしたいということでこの記者会見に臨んだということです。
 その前後の経過などは全部省かせていただいて、その後職場でどのようなことが起こったかということに話を移させていただきます。コープ商品とは、生協がつくったオリジナルの商品です。生協で売っているほかの大手メーカーさんなり、地元のメーカーさんなりのマークがついている商品ではなくて、コープ商品、COOPがついた商品で、5歳の女の子が一時重態になったということで、私たちも大きなショックを受けたわけです。

◆仲間が力をあわせて支えている生協事業―8割以上がパート・非正規
 ここで、生協の仕事をご紹介いたします。これは店舗の中の様子です( 写真1、 写真2、 写真3 )。店舗の裏では、このように調理をしています( 写真4、 写真5 )。生協はご注文を頂いて、トラックで配送する共同購入というものもやっております( 写真6 )。これは山形県のほうの相当危険な雪道で配送をするトラックですが( 写真7 )、こうやって1軒1軒お配りしたり、班単位でお配りしています( 写真8 )。この写真( 写真9 )は、ご注文にあった商品を仕分けするという物流の写真です。後の議論でご紹介したいと思いますが、生協の職場はパートタイマーの比率が非常に高くて、8割近くがパート・非正規として働いております。だから、最低賃金の闘いをがんばらなければならないということで、今日の話とつながらないようなんですが、労働組合に結集して、最低賃金の審議委員にも立候補して、2月13日の決起集会には全国から700人近くが集まり、行動をしたということもご紹介します( 写真10、 写真11 )。

◆ありとあらゆる抗議と問い合わせ
 今ご覧いただいた職場に、テレビ報道や記者会見以降、どんなことが起こったかということは想像していただけるかと思います。ちばコープの市川店を利用されている組合員が被害を受けて、病院に担ぎ込まれ、危険な状態になった。ちばコープの仲間は、お店に来られる組合員のみなさんに、「この商品は危ないですから、お家に残っていたら持って来ていただきたいし、食べないで下さい」と訴えるわけですが、「なんだ生協は」と「コープ商品は中国でつくらせていたのか」、「毒入りのものを俺たちに提供しているのか」など数え切れないほどの抗議が寄せられました。共同購入ではトラックで1軒1軒回収に回りましてお話をするわけですが、やはり組合員さんは、いつもと態度が違ってくるわけです。そういう中で、お話をしていく。さきほど店舗の受付カウンターの場面が出ましたが、電話がすごかったです。日本生協連の電話はほとんどパンクして6万件といわれる問い合わせ、抗議がありましたし、ちばコープのありとあらゆる部署にも電話がかかってくると、電話の対応に一生懸命頑張ったわけですが、心身ともに大変な状況になっていく仲間が何人も出ました。労働組合としては何をしてよいか途方にくれましたが、休憩室にお茶を用意して「とにかくいっぱいになったらお茶をのみに来いよ」と声をかけたりとか、仲間同士で話し込むなど、いろんな場面が生まれました。

◆生協としての責任は
 この事件、JTに仕事をお願いしたのだから、JTのせいだということにはなりません。プライベートブランドは大体、仕様書をつくって、メーカーに作っていただくというようなことになります。しかし、だからといって、委託先に問題があるということで、頬かむりすることは絶対に認められません。生協には、それがコープ商品である以上、製造者責任というものがございますし、各生協はそれを販売していますから、販売者責任というものがあります。評論家の内橋克人さんが、ラジオ番組で「コープ手作り餃子」と銘打ってあるのだから、普通に考えると生協の職員が手作りで餃子をつくっていると考えるとおっしゃっていました。コープ商品が中国でつくられているということを、その事件によって知り、大変なショックを受けたという話も沢山寄せられました。


■食を巡る事件をどうみるか
 ここで、冷凍餃子事件を日本の食を巡る問題全般とどうわけられるのか、言い換えれば、この事件が、日本の食を巡る事件のなかでどう位置づけられるか、ということを考えてみたいと思います。食をめぐってはあきれるほどいろんなことが起こっているわけですが、食を巡るいろいろな事件は分類することができます。

◆「偽装事件」
 まず、「表示の偽装、産地の偽装」ということです。
 「日付の偽装」は、「白い恋人」。生協の豆腐でもそういうことがありました。最近は、消費者のところで1日新しいか古いか、1日、何時間かの違いがスーパーの間で競争になっています。その方が売れるというか、評判がいいということでゴマかしてやってしまうという事件がおきます。
 「材料の偽装」については、ミートホープ事件が、昨年の7月でした。牛肉コロッケが、牛肉じゃなかった。もつも含めて訳の分からないものが入っていたということで、ミートホープ社の社長が最後は逮捕されました。
 牛肉の産地偽造というのは、いろんなところでおきています。『スーパーの女』という映画をご覧になった方もいらっしゃるかと思います。あれはもう何年も前のことですが、良い肉と悪い肉を重ねて一晩寝かせて、切ってしまえば分からないというシーンがありました。これは業界全体の体質の問題であると言われています。生協ですごく困ったのは、例えば○○産の美味しい鶏肉を共同購入のチラシで提案したが、1000くらいの注文が来るかと予測して準備していたのが、フタをあけたところが、1万くらい来ちゃったということがありました。急には鶏肉は増やせません。だけど何とかしなくちゃいけないということで、他のものを混ぜてしまったということがありました。2週間も前に注文をいただくわけですから、「なくなった」とは言いにくいわけです。

◆安全の軽視
 それから安全を軽視した事件。安全を軽視し、古い材料を使う。古くは雪印乳業、最近では、赤福で、また、マクドナルドやヤクルトでもそんなことがあったりします。余ったものの再利用といえばかっこ良く聞こえますけれども、勝手にそういうことをやって、ごまかしているという問題です。

◆農薬/食品添加物、狂牛病や遺伝子組み換え
 以上の偽装や安全軽視の問題というレベルの問題と一線を引かなければならない問題があります。農薬や食品添加物の問題、狂牛病や遺伝子組み換えの問題です。
 何でアメリカに、日本はこんな屈辱的な思いをしなければいけないのでしょうか。日本国民が、アメリカの牛肉の安全性は心配だから嫌だといっているのですから、何も輸入させなければいいわけですよね。それを日本政府は何とか輸入を再開しようと、狂牛病の全頭検査を拒否するアメリカの牛肉を入れようという変なことになっています。

◆フードバイオレンスとしての冷凍餃子事件
 それとまた一線を引く問題として、フードバイオレンス、いわゆる異物混入という事件があります。これは、いままで紹介してきた問題とは異質な事件だと私は考えています。生物テロという言葉も出るくらいなのですが、まさに犯罪です。冷凍餃子事件は、いまもって真相究明ができていませんが、私としては、あんな高濃度の農薬が入っているということは、誰が考えても尋常な話ではないと思います。
 冷凍餃子の「事件」という面では大変な中身だと思います。いま問われていることは何か。この冷凍餃子事件を契機に噴出したのは、生協のあり方をどう考えるのかということです。一つは、先ほど述べましたように「生協商品は中国でつくっているのか」と驚かれるという問題をはじめ、生協に寄せられている様々なご意見やご不満をどう受け止めるのかということ。また、もう一つ国民的な関心となったのは、日本の食糧自給率がこんなに低くて、中国の製品が全部ストップしたらお店、商品が成り立たないというのが日本の状況だということです。多くのみなさんが気づかれたり、考えたり、不安になっているということです。また、このなかでも、生協のあり方が問われていると思います。後で時間があれば触れていきたいと思いますが、ここでのお話は終わりたいと思います。




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