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4・18シンポジウム この職場から 日本の安心安全は守れるのか ディスカッション A
「安い」ということをどう考えるか

西田)  すみません。コーディネーターの立場ですが、1つだけ質問させていただきます。山家先生にお聞きしたいのですが、先生の最近の著作である「日本経済 見捨てられる私たち」でも、この社会を変えるためには、労働者の権利を守らなければいけないと強調されています。しかし、なかには、物を買うには安いほうがいい。金融のグローバル化といっていますけれども、国際競争力を高めなければ外資にやられてしまう。なんとなくそういうふうに思ってしまっている人が多いのではないかと思うのですが、その辺りを先生はどのように捉えていらっしゃるのですか。

■あんまり安すぎると、どうかなと疑う心も必要
  −日本が国際競争力を心配していると話せばビックリされる
山家)  安いほうがいいというのはその通りですがね、あんまり安すぎるとどうかなと疑う心も必要なんじゃないですか。この安い代金で、働いている人はちゃんと報われているのかな、と思いを寄せる心がついてないといけないと思うのです。例えば、宅配便ってあるのですが、あれだけ安いお金で全国各地に翌日か、翌々日には届く。非常に便利でありがたくて、ずいぶん使っているのですが、ただ本当にこれで、トラックの運転手、深夜働いている人、その辺の人にきちんと賃金が払われているんだろうか、労働条件はどうなるんだろうかと、絶えず心が痛む感じがします。あるいはコンビ二の弁当は深夜につくっているといいますが、そんなふうにしてまで、私はこの弁当を食べなきゃいけないのかなと思う。そのような疑問をもって、きちんとした理由のある値上げは認めるといいますか、むしろ値上げさせてちゃんとした対価を払ってサービスを買うという考え方が必要だと思います。ただ、それは個人の心構えの問題なので、社会的にどうするかというと、最低賃金をきちんと払うようにするとか、深夜労働を禁止するとか、あるいは深夜労働をさせるにはものすごく割高な賃金を払わないといけないようにするとか、そういう歯止めが必要じゃないかと思います。
 それから国際競争力については、よく「賃上げをすると国際競争に負ける」とか、あるいは「企業にもっと税金をかけると競争に負けるから、税金を下げてくれ」といっていますが、そんな心配は日本は全然ないといってよいと思います。輸出と輸入の差額を国際収支と言いますが、その差額が日本は世界一大きいわけです。ですから国際競争に多少負けて輸出ができなくなっても、あるいは輸入品が増えても、ゆとりがあるというか、まだまだ黒字である。もう1990年代から20年近くずっと黒字は世界1位。2位の国はいろいろ変わるのですが、日本は断トツ1位を走っていて、マラソンでいえばはるか彼方に2位が出たり入ったりして競争している状況です。ですから、日本が国際競争力を心配していると話したら、たぶん他の国の人にビックリされて笑われるでしょう。そして、その国際競争力を維持するという名目で、働いている人が大変な状況になり、福祉が悲惨な状況になっているといえば、もう呆れてものも言えないという状況であるということになります。企業が「国際競争力を強めるため」というと、みんな納得してくれて賃上げも抑制できるし、税金負担も軽くなってしまうのですが、決してそういう現実はないということをよく知っていただきたいと思います。

西田)  ありがとうございました。

■「安い」ということのリスクを考える必要がある
桑田)  「安い」ということについて考えるときだと思うのです。200万円以下の収入というのは、私たちの職場でごろごろしているわけですが、これでは人生を全うすることはできませんよ。それができるような物価の低いものしか出回っていないようでしたら、その低価格の物をつくったり、販売したりするコストがまた下がるということで、悪魔のサイクルに陥るわけですよね。そういう中でまともな仕事ができるかといえば、それはむずかしい。委託労働者・派遣労働者でいくら頑張っても年間200万円しかいかないとなると、暮らしていけない、将来が描けない、食うだけということになりますから、まともな仕事はできないということもおこってきます。
 どんなに「安全なもの、安全なもの」と言っても、日本のいろんな場面で、労働の実際の現場のところに危ない状況がつくられていると思うのです。「何でこんなに安いんですか」とテレビのアナウンサーが聞くと、社長が「それは、直接仕入れていますから」と答える。しかし、この「直接仕入れる」ということのリスクを考える必要があると思います。
 問屋さんや中卸さんがあるメリットは、非常に大きなものがあります。築地市場は世界一の規模と世界一の能力があるといわれています。一見、汚いところですけれども、一度も食中毒をおこしていない、外国の旅行者、外国の業界の人は必ず築地にいくそうです。誰に聞いても目利きができる、「これはどういう商品?」ということが説明できるのです。これは残念な言い方ですけれども、私たち生協の商品担当がそんな目利きができるかといいますとできません。
 こういう中で生まれてくるリスクも日本は考える必要があると思います。





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