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4・18シンポジウム この職場から 日本の安心安全は守れるのか ディスカッション C
ディスカッションを終わるにあたって

西田)  それでは大変残念ですが、そろそろ時間が参っております。このディスカッションのまとめとして、パネリストのみなさんから一言ずつ、お話をいただけないかと思います。山家先生からお願いできますでしょうか。

■基本になるのは現場のたたかい 大いに頑張ってほしい
山家)  いま大体申し上げたのですが、やはり基本になるのは現場のたたかいだと思います。今日は、労働組合の代表の方、組合員の方もいらっしゃいますし、ぜひ現場で頑張ってほしいということだけです。それによって日本が変わると、それ以外に、逆にいうとなかなか変わりようがないと思います。我々研究している者を大いに利用していただいて、大いに頑張っていただきたいと思います。

西田)  ありがとうございました。それでは山口議長お願いします。

■組織化し要求まとめる原点に立ち返れば変えていける
山口)  先ほど、93年に、航空法の規制緩和で乗員の交代制限を10時間から12時間まで伸ばしたという話をしました。会社は、労使間の協定を破棄してまで、今まで9時間だったのを11時間にしたわけです。しかし、私たちは裁判をおこないました。最初は30人ほどが第一陣でやって地裁で勝って、それで高裁でやっている中で、第二陣840名の原告団をつくりました。乗員の長時間勤務がどうなんだということを、安全問題を中心にしてたたかったわけです。世界の乗員を始め、連日、地方紙ブリーフィングなどの活動をする中で、結局、第一陣は高裁でも勝った。地裁・高裁で勝って、第二陣も地裁で勝って、会社は最高裁に上告受理申し立てをしたのですが、いよいよ周りの情勢を見て、とり下ろして判決を確定し、もとの条件に戻しました。
 そういう点では、私たちは法律が変っても中身でとれる。じゃあ、どうしてそういうふうに法律を変えられたのかということを、政治と私たちの活動、日常のことと結びつけて発信していくのも労働組合の役割ではないかなと考えています。そういう意味では、一つひとつの問題は職場が一番よく知っているわけですから、それを組織化する、要求にまとめるという、労働組合の原点に立ち返って発信する役割をやっていけば、変えていけると私たちは確信をもっています。

西田)  ありがとうございました。そしたら桑田委員長お願いします。

■これでいいのかと発信できる労働者、労働組合にしていきたい
桑田)  日本生協連は、中国の工場への調査、監視ということも含めて餃子事件の対策を打ち始めているのですが、生協でこんなことが起こるなんて思ってもいませんでした。「それじゃあダメなんだ」、「起こるんだ」ということでの対策を打つということは、その通りだし、そこで頑張らなければいけないと思います。
 ただ、もう一つ抜本的な対策として、なるほどと思ったのは、コープ商品というのは5,000品目あって、これを商品担当が対応するわけですが、膨大な数です。手を打とうとしているのは、これを2/3に品目数を減らして絞り込むということと、逆に商品担当を増やすということ。つまり一人ひとりの商品担当からすると、扱い商品が半分になり、そのことで安全を確保する。また、これまでも生協はそれなりのレベルをもっているのですが、検査体制を、もっと高めるということをするという面を発信し、私たちとしてもこれを支持しています。しかしこのように海外で安いものをつくっていくリスク、逆にいえば、安心できる物にはこんなにコストがかかるという面をみる必要があると思っています。
 私は、生協の職員は自信を喪失しているのですが、私たちはそういった、冷凍食品の製造だとか、物の流れだとか、目利きの話だとかということについて、組合員のみなさんにきちんと話をできるような労働者になろうということを、今掲げています。
 生協運動で今まで足りなかったことは、消費者にちゃんとそうしたことをお知らせしていないということ。単なるお客さんにしていたというところに大きな問題があるんだということも声を大にしていきたい。生協運動を、生協運動らしくしたい、ということを思っています。
 加工食品、インスタント食品が盛んになって、冷凍食品がどんどん流行って、今や惣菜が一番売れるんですよ。こういう国民の食生活、こんなことでいいのだろうかということを、売っている現場からも発信していく、そんな労働者・労働組合になりたいと思っています。よろしくお願いします。

西田)  ありがとうございました。そうしましたら、吉田委員長お願いします。

■よい産業にし、よい社会をつくる全損保に
吉田)  やはり、いろいろな産業の方々や先生とお話をして、今日はある意味、ずっと考えてきたことに確信がもてました。

◆共通項を広げ、社会全体をよくすることに意を注ぎたい
 社会がろくでもなくなってくれば、それぞれの産業もろくでもない役割を担わされて、労働者もろくでもない役割を担うという、そういう関係にあるといこうことです。これのことについていえばどの産業も全く同じなわけですね。新自由主義というものがすすんでいって、そうすると損保というのも社会的役割を果たさないような産業になっていって、儲けのための仕事ばかりをさせられるという労働者が生まれていって、そこに社会的役割がどんどん無くなって、安心・安全を守れなくなるという、そういうことになっていくということです。
 だからやっぱり今の時代、そうならないように、今日のテーマでいうと安心と安全をしっかり守れるような産業をつくるには、それが大事にされる社会になっていかなければいけない。山家先生がおっしゃったようにやっぱり「損保ってこうなっているんですよ」「航空ってこうなっているんですよ。」「同じことがあるんですね」ということで、共通項を広げていって、社会全体をよくしていくというところに労働組合がもっと意を注いでいかなければいけない。そういう時代になっているなというのがひとつです。

◆よい仕事か、よい仕事でないのかを分かる労働者であることがすごく大事
 もうひとつはろくでもない社会になって、ろくでもない産業になって、ろくでもない役割を担う労働者ということでいえば、やはり、労働者が頑張るか頑張らないかということは極めて大きなポイントになるということです。労働者がただ一人で「いや、俺はそんなことはしない」「代理店の『合理化』なんて私のポリシーに反するから一切しません」などと職場で拒否できるかというと、それはできない。けれども、やっぱり自分の仕事の質、すなわち、良い仕事なのか、良い仕事ではないのかということをわかっている労働者であるかどうかというのはすごく大事なことだと思います。それはわかった上で、労働の質を良くしていくことを通じて、企業を良くしていって、産業を良くしていって、社会も良くしていくという、そういう運動のあり方というのも大事になっていくと思います。

◆「働く」ことの質を守っていく労度運動が大事に
 それから、「働く」ということをただすとき、今までは量の問題−長時間過密労働やサービス残業をなくすということでとりくんできましたが、これからは「働く」ということの質の守っていく、そういう労働組合の運動というのがすごく大事になっていく。同じ長時間労働でも、社会的役割を果たしている仕事で長時間労働になるのと、ろくでもない仕事で長時間労働になるのと、全然違うわけですから。そこの部分にしっかり組合が焦点をあてて、「働く」ことの質をどう守っていくのかという運動をいろんな産業の方々とともにとりくめるようになってくれば、この社会が大きく変わっていく力になるのではないかということを確信しました。
 「明日が変わる時代」ということで春闘をやっていますが、そこに大いに確信を持って、産業の明日を変える。そのことを通じて社会を変えていく運動を、ひとつの組合では力はないかも知れないですけれども、多くの方とともに手をとって頑張っていきたいということを今日あらためて実感しました。
 これからの労働組合の運動の方向性をみんなでつくっていきながら、いい産業にして、いい社会にしていく全損保であるということを、この会場のみなさんと、これからにむけて確認をしあうということで私の発言は終わりにしたいと思います。ともに頑張りましょう。

西田)  みなさん、本当にありがとうございました。パネルディスカッションについてはこれで終了させていただきたいと思います。コーディネーターとして、みなさんから貴重な話を頂いて、私自身も勉強になったと思います。これまで職場から声を出すことが活動の原点であり大事だということを常日頃訴えてきた側の人間なのですが、あらためてその大事さと、やはり他の産業の方々と共闘していくことの大事さを痛感させられました。あと本当に個人的ですけれども、「安い」ということのリスクということを頭ではわかっていたつもりですけれども、「安い」ということを享受する自分が、提供する人たちから何かを奪っているという側面もあるということを痛感させられました。ありがとうございました。

尾高)  本当に今日はパネリストのみなさんのお話で、特に一人ひとりが不幸な社会を目指すのか、本当に一人ひとりにとって幸せな世界を目指すのかといったことについて深く考えさせられました。やはり不幸な社会にすすむのではなくて、一人ひとりが幸せになれる社会、そのために僕たちが何をできるのかということを絶えず考えながら、これからの労働組合の運動に、自分自身とりくんでいければと思いました。ありがとうございました。それではパネルディスカッションは終了して、総合司会の土方さんにバトンタッチをしたいと思います。お願いします。(了)


土方) パネリストの皆さんありがとうございました。また、コーディネーターのお二人ご苦労様でした。パネリストの方々は降壇いたしますので、再度大きな拍手をお送りください。本日は140名の方にご参加いただきました。ありがとうございました。これにて本日のシンポジウムは全て終了です。皆さん、お気をつけてお帰りください。




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